2027年1月から、「防衛特別所得税」という新しい税金が始まります。ニュースで「防衛増税」という言葉を見て、「また手取りが減るの?」と身構えた方も多いと思います。私もそうでした。
でも、財務省と国税庁の資料を読んでみたら、話はもう少し複雑でした。2027年の時点では、給料の手取りも配当の受取額も、じつはほとんど変わりません。その代わり、私たちが払う期間が10年延びます。
この記事では、2027年3月に夫婦で退職してサイドFIREを目指す我が家の目線で、防衛特別所得税の中身・手取りが変わらない理由・本当の負担がどこにあるのかを、公的資料の数字だけで整理しました。配当で暮らす予定の方には、最後の試算がいちばん効くと思います。

「1%増税」と聞くと年収の1%だと思ってしまいますよね。私も最初はそう勘違いしていました。ここ、じつは全然ちがいます。
結論|2027年1月から始まるけれど、当面の手取りは変わりません
先に結論からお伝えします。
- 防衛特別所得税は「所得税額の1%」。年収の1%ではありません
- 同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%へ引き下げられるので、上乗せ分の合計は2.1%のまま据え置き
- つまり2027年からの給与天引きも、配当の20.315%も、いまと同じ
- 本当の負担は、復興特別所得税の課税期間が10年延長(2037年→2047年)されたこと
- さらに防衛特別所得税には「当分の間」としか書かれておらず、終わる日が決まっていない
「今すぐ財布が痛む増税」ではなく、「終わりが遠のいた増税」。ここが一番のポイントです。
防衛特別所得税とは?「年収の1%」ではなく「所得税額の1%」
課税されるのは「基準所得税額」
防衛力を強化するための財源として、新しく作られた税金です。財務省の令和8年度税制改正の大綱には、こう書かれています。
防衛特別所得税額は、その年分の基準所得税額に1%の税率を乗じて計算した金額
財務省「令和8年度税制改正の大綱」
基準所得税額とは、ざっくり言うとその年に納める所得税の金額のことです。年収でも、課税所得でもありません。たとえば所得税を20万円納めている人なら、防衛特別所得税は20万円の1%で2,000円。年収600万円の1%(6万円)ではない、というわけです。
| その年の所得税額 | 防衛特別所得税(1%) | 復興特別所得税(1.1%) | 上乗せ合計 | 改正前の上乗せ(2.1%) |
|---|---|---|---|---|
| 5万円 | 500円 | 550円 | 1,050円 | 1,050円 |
| 10万円 | 1,000円 | 1,100円 | 2,100円 | 2,100円 |
| 20万円 | 2,000円 | 2,200円 | 4,200円 | 4,200円 |
| 50万円 | 5,000円 | 5,500円 | 10,500円 | 10,500円 |
右の2列を見比べてください。上乗せの合計は、改正前とまったく同じ金額です。納める先の名前が「復興」から「復興+防衛」に変わっただけ、というのが2027年時点の姿です。
いつから? 2027年1月1日以後の所得から
防衛特別所得税の課税期間は令和9年(2027年)以後の当分の間とされています。会社員なら2027年1月に支払われる給与の天引きから、フリーランスや個人事業主なら2027年分の確定申告から対象です。なお、会社にかかる防衛特別法人税は一足先に2026年4月から始まっています(法人税額の4%、年500万円の控除あり)。法人が先、個人が2027年1月からという順番です。
会社員は給与天引き、配当は源泉徴収で自動的に
手続きは基本的に必要ありません。給与から天引きされる源泉徴収税額や、証券口座で自動的に引かれる配当の税金に、そのまま含まれる形になります。会社の経理や源泉徴収をする側は納付書の書き方が変わりますが、受け取る側がやることは今のところ何もないのが実情です。
手取りが減らないカラクリ|復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がる
足し算するとピッタリ2.1%で据え置き
同じ大綱に、復興特別所得税についてこう書かれています。税率を1.1%(現行2.1%)に引き下げる、そして課税期間を令和29年(2047年)まで(現行は令和19年=2037年まで)とする。
新しく1%を足して、もともとの2.1%から1%を引く。結果、所得税に上乗せされる付加税は2.1%のまま動きません。ニュースの「増税」という言葉から想像する痛みが、2027年にはまだ来ないのはこのためです。
配当の20.315%も、原稿料の10.21%も今と同じ
付加税の合計が変わらないので、私たちが日ごろ目にする税率もそのままです。
| よく見る税率 | 内訳 | 2027年以降 |
|---|---|---|
| 上場株式の配当・売却益 20.315% | 所得税15% + 付加税0.315% + 住民税5% | 変わらず20.315% |
| 原稿料・講演料など 10.21% | 所得税10% + 付加税0.21% | 変わらず10.21% |
| 預金利子 20.315% | 所得税15% + 付加税0.315% + 住民税5% | 変わらず20.315% |
付加税の0.315%は、所得税15%に2.1%を掛けた数字です。この2.1%の中身が「復興2.1%」から「防衛1%+復興1.1%」に置き換わるだけなので、合計は1円も動きません。

配当を老後の生活費にしようと思っている我が家にとっては、正直ほっとしました。2027年に急に受取額が減るわけではないんですね。
じゃあ何が変わるの? 本当の負担は「10年の延長」と「終わりがないこと」
復興特別所得税は2037年で終わるはずだった
東日本大震災の復興財源として2013年に始まった復興特別所得税は、2037年12月31日で終わる予定でした。つまり2038年からは上乗せがゼロになり、配当の税率も20.315%から20%に下がるはずだったのです。
それが今回の改正で2047年12月31日まで10年延長されました。税率は下がるけれど、払う期間は10年増える。これが「手取りが変わらないのに増税」と言われる理由です。
防衛特別所得税には終了時期が書かれていない
もうひとつ気になるのが、防衛特別所得税の課税期間が「令和9年以後の当分の間」という表現になっている点です。復興特別所得税のように「令和29年まで」という期限がありません。当分の間がいつまでなのかは、現時点では誰にも分かりません。
我が家の配当で計算したら、10年で約2万5,000円
抽象的な話だとピンとこないので、我が家の実際の数字で計算してみました。現在の配当は税引き前で年786,779円(2026年7月時点、配当管理アプリの実績)。この金額のまま2038年を迎えたと仮定します。
| 時期 | 上乗せされる付加税 | 配当にかかる税率 |
|---|---|---|
| 2026年まで(現在) | 復興2.1% | 20.315% |
| 2027年〜2047年 | 防衛1% + 復興1.1% | 20.315%(変わらず) |
| 2048年以降 | 防衛1%のみ(当分の間) | 20.15% |
| 【参考】改正がなければ2038年以降 | なし | 20% |
改正がなければ、2038年から我が家の配当税率は20%になっていたはずでした。それが2047年までは20.315%のまま。差は0.315%です。786,779円 × 0.315% = 年2,478円。10年でおよそ2万5,000円になります。
配当が目標の年100万円(税引き後)まで育っていれば、負担はもう少し増えます。毎月の家計を揺るがす金額ではありませんが、「2038年から手取りが増えるはずだった」という前提が消えたことは、取り崩し計画を立てるうえで知っておきたいところです。

金額そのものより、「終わる予定だったものが終わらなくなった」ほうが私にはショックでした。FIRE後の家計は、税金が下がる前提で組まないほうが安全ですね。
サイドFIREを目指す我が家への影響を整理してみた
NISAの中は非課税なので影響ゼロ
防衛特別所得税は所得税に上乗せされる税金です。そのためNISA口座の中で受け取る配当や売却益には、そもそも所得税がかからない=影響もありません。我が家が新NISAの枠を優先して埋めてきたのは値上がり益のためでしたが、結果的に今回の改正の影響も受けにくい形になっていました。
退職後は所得税額そのものが小さくなる
2027年3月に夫婦で退職すると、給与収入がなくなります。所得税額が小さくなれば、その1%である防衛特別所得税も自動的に小さくなります。働いている今のほうが上乗せ額は大きく、退職後は軽くなるという関係です。ただし退職金や年金にも所得税はかかるので、ゼロになるわけではありません。
住民税・社会保険料はこの改正と無関係
よく混同されますが、防衛特別所得税は国税である所得税への上乗せです。住民税の税率が上がるわけではありませんし、健康保険料や年金保険料とも別の話です。退職後にいちばん重くのしかかる住民税・国民健康保険料は、この改正では変わりません。
今からできること3つ(駆け込みは必要ありません)
1. 課税口座よりNISA枠を先に埋める
上で書いたとおり、NISAの中には所得税がかかりません。長い目で見ると、付加税が「当分の間」続く前提なら、非課税の枠から先に使うほうが有利という基本は変わりません。まだ枠を使い切っていない方は、そこが一番シンプルな対策です。
もちろん投資なので、値下がりして元本を割る可能性はあります。生活防衛資金を現金で確保したうえで、余裕資金で無理なく続けるのが前提です。
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2. 所得控除の取りこぼしをなくす
防衛特別所得税は「所得税額」に対してかかります。ということは、所得税額が減れば、上乗せされる金額も自動的に減るということです。医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)、iDeCoの小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除。使えるはずの控除を使い切ることが、そのまま対策になります。
3. 「2026年のうちに」という駆け込みは意味がない
ここは正直に書きます。2027年から上乗せの合計が変わらない以上、2026年のうちに配当を前倒しで受け取る、といった駆け込み行動に意味はありません。慌てて売買して手数料や値動きで損をするほうが、よほど痛いです。「知っておくだけでいい改正」だと私は受け止めています。
よくある勘違い3つ
「年収の1%を取られる」は間違い
課税されるのは所得税額です。たとえば年収600万円の会社員なら、納める所得税はざっくり15万円ほど(家族構成や控除によって変わります)。その1%なので、防衛特別所得税は1,500円ほど。年収600万円の1%=6万円ではありません。しかも同じ額だけ復興特別所得税が下がるので、2027年に実際に増える負担は0円です。
「復興特別所得税がなくなる」も間違い
なくなるのではなく、税率が1.1%に下がって、期間が10年延びます。復興財源として集める総額を確保したまま、防衛費の分を上に乗せた形です。
「住民税も上がる」も間違い
今回の改正は所得税に対する付加税です。住民税の税率は変わりません。
まとめ|今は痛くない。でも「終わり」が遠のいた
- 防衛特別所得税は2027年1月から、所得税額の1%(年収の1%ではない)
- 同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%に下がるため、上乗せ合計は2.1%で据え置き
- 給与の手取りも、配当の20.315%も2027年時点では変わらない
- 本当の負担は復興特別所得税の10年延長(2037年→2047年)と、防衛特別所得税に終了時期がないこと
- 我が家の配当(税引き前約78万円)で試算すると、延長分の負担は10年で約2万5,000円
- 対策はNISA枠を優先・控除の取りこぼしをなくすの2つで十分。駆け込みは不要
FIRE後の家計は「そのうち税金が下がるはず」という前提で組まないほうが安全だと、今回あらためて思いました。制度は変わります。変わっても慌てないように、非課税の枠と控除という自分で動かせる部分を、先に整えておきたいですね。
※本記事は財務省「令和8年度税制改正の大綱」および国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)」「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」(令和8年5月)をもとに、2026年8月時点で確認できる内容をまとめたものです。税額の試算は上乗せ部分のみを単純計算したもので、実際の税額は所得や控除、家族構成によって異なります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。本記事はプロモーションを含みます。





