「60歳で定年、そのあと再雇用。仕事はほぼ同じなのに、給料は3〜4割ダウン」。よく聞く話ですが、そこで下がった分の一部を国が補ってくれる制度があるのをご存じでしょうか。高年齢雇用継続給付といいます。
我が家は夫が現在54歳。2027年3月に夫婦で退職する予定なので、正直に言うとこの給付は我が家では使わない見込みです。それでも調べたのは、「使わない」と決めるにも中身を知らないと決められないから。そして、いま60歳前後で働いているご両親がいる方には、知っているかどうかで数十万円変わる話だからです。
この記事では、厚生労働省とハローワークの資料をもとに、もらえる条件・金額・2025年4月の縮小・2026年8月1日に改定されたばかりの最新の限度額、そして一番多い「もらい損ね」を防ぐ方法までまとめます。

私も最初は「60歳の話でしょ?」と他人事でした。でも夫は現在54歳、60歳まであと6年。親世代にも該当する人がいるので、調べておいて損はなかったです。
結論|60歳で給料が75%未満に下がったら、最大10%が毎月戻ってくる
- 60歳以上65歳未満で雇用保険に入って働いている人が対象
- 60歳時点より賃金が75%未満に下がると支給される
- 64%以下まで下がれば、各月の賃金の10%(最大)
- この給付は非課税。まるっと手取りが増える
- 2025年4月に最大15%から10%へ縮小された
- 2026年8月1日から支給限度額が397,369円に改定(毎年8月1日に変わる)
- 手続きは会社経由だが、会社が知らずにもらい損ねるケースがある
高年齢雇用継続給付ってどんな制度?
対象になる3つの条件
ハローワークの説明では、支給されるのは次の条件をすべて満たす人です。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 年齢 | 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること |
| 加入期間 | 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること |
| 賃金の低下 | 原則として60歳時点に比べ、60歳以後の賃金が75%未満に低下していること |
支給される期間は、60歳に達した月から65歳に達する月まで。最長で5年間、毎月受け取れる計算です。なお高年齢雇用継続給付には、そのまま働き続ける人向けの「高年齢雇用継続基本給付金」と、失業手当(基本手当)を受けたあと60歳以後に再就職した人向けの「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
いくら戻る? 64%以下まで下がれば「最大10%」
金額の考え方はシンプルです。ハローワークの説明を引用します。
60歳時点の賃金の64%以下に低下した場合は、各月の賃金の10%相当額となり、60歳時点の賃金の64%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の10%相当額未満の額となります。
ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
| 60歳時点と比べた賃金 | もらえる額(2025年4月以降に60歳の人) |
|---|---|
| 75%以上(あまり下がらなかった) | 支給なし |
| 64%超〜75%未満 | 低下率に応じて、賃金の10%未満の額 |
| 64%以下(大きく下がった) | 賃金の10%(最大) |
ポイントは、計算のもとになるのが「下がったあとの給料」だということ。60歳時点の給料の10%ではありません。
月給24万円ならいくら? 5年でどれくらい?
たとえば60歳時点で月40万円だった人が、再雇用で月24万円になったケース。低下率は60%なので64%以下、つまり最大の10%が適用されます。
| 期間 | もらえる額(月給24万円・支給率10%の場合) |
|---|---|
| 1か月 | 24,000円 |
| 1年 | 288,000円 |
| 5年(60歳→65歳) | 1,440,000円 |
60歳から65歳までまるまる受け取れる人なら、合計で約144万円。知っているかどうかだけで、この差がつきます。
税金がかからないのが地味に大きい
しかもこの給付、税金がかかりません。雇用保険法では、失業等給付として受け取ったお金を基準に税金その他の公課を課すことはできない、と定められています。高年齢雇用継続給付もこの失業等給付に含まれます。
給料で24,000円増やそうと思ったら、所得税や社会保険料が引かれて手元に残るのはもっと少なくなります。まるっと手取りが増える24,000円は、額面以上の価値があります。

看護師の給料でも、手取りを月2万円増やすのは簡単じゃないです。それが手続きひとつで、しかも非課税でもらえるなら、確認しない手はないですよね。
2025年4月から「最大15%→10%」に縮小されました
分かれ目は「60歳に達した日」
この制度、以前は最大15%でした。それが2025年(令和7年)4月1日から10%に縮小されています。厚生労働省の案内によると、分かれ目は60歳に達した日(その時点で被保険者期間が5年に満たない人は、5年を満たした日)です。
| 60歳に達した日 | 支給率(上限) |
|---|---|
| 2025年3月31日以前 | 各月に支払われた賃金の15% |
| 2025年4月1日以降 | 各月に支払われた賃金の10% |
つまり同じ職場で同じように給料が下がっても、誕生日が数日違うだけで受け取れる額が変わるということ。2025年3月31日以前に60歳になった人は、いまも15%のままです。
なぜ縮小されたのか
この給付はもともと「65歳までの雇用を継続してもらうための援助」として作られた制度です。65歳まで働ける仕組みが定着してきたことで、役割を縮めていく、というのが国の方向性です。将来さらに縮小・廃止される可能性もあるので、「もらえる人は、もらえるうちに確実にもらう」が正解だと思います。
2026年8月1日から支給限度額が397,369円に(改定されたばかり)
賃金がこの額を超える月は支給されません
見落としやすいのが支給限度額です。ハローワークの説明では「各月の賃金が397,369円を超える場合は支給されません」とされています。この金額は毎年8月1日に改定され、2026年8月1日から386,922円→397,369円に引き上げられました。
つまり、再雇用後の給料がこの金額を超えている月は、たとえ60歳時点より大きく下がっていても支給されません。毎年変わる数字なので、境目あたりの人は8月に一度チェックするのがおすすめです。
ついでに知っておきたい失業手当の上限も改定
同じ2026年8月1日の改定で、失業手当(基本手当)の1日あたりの上限額も上がりました。60歳以上65歳未満は7,623円→7,830円、45歳以上60歳未満は8,870円→9,110円です。退職を考えている人は、この数字も頭に入れておくと計算がしやすくなります。
いちばん怖いのは「もらい損ね」
手続きは会社がやってくれる建前だけど
高年齢雇用継続給付の申請は、原則として会社がハローワークに対して行います。ただ、この制度は意外と知られておらず、会社の総務や人事の担当者が把握していないことがあります。条件を満たしているのに誰も手続きをしていない、というもらい損ねが実際に起きています。
60歳になったら、自分から一言かけるだけ
対策はとてもシンプルです。60歳になったタイミングで、こう聞くだけ。
「私の高年齢雇用継続給付の手続きを、お願いできますか?」
この一言があるかどうかで、最大144万円が変わる可能性があります。言いにくいことでもありませんし、会社にとっても本来やるべき手続きです。
気づくのが遅れても、時効は2年
「もう61歳、いまさら手遅れかも」という場合もあきらめないでください。厚生労働省は「雇用保険の給付金は、2年の時効の範囲内であれば、支給申請が可能です」と案内しています。申請期限を過ぎて支給されなかった人も、時効が完成する前に再度申請して要件を満たしていれば支給されます。

親世代に該当する人がいたら、今夜の電話で聞いてみるのがいちばん早いです。「60歳から給料下がった? 会社に手続きしてもらってる?」の2つだけで大丈夫。
年金をもらいながら働く人は「調整」に注意
在職老齢年金が最大4%止まります
もうひとつ知っておきたいのが年金との関係です。厚生年金保険の被保険者で特別支給の老齢厚生年金などを受けている人が高年齢雇用継続給付を受け取ると、在職による年金の支給停止に加えて、年金の一部が止まります。日本年金機構によると、止まる額は最高で標準報酬月額の4%に当たる額です。
とはいえ、給付でもらえるのは賃金の最大10%。止まる年金が最大4%なので、差し引きすればプラスになるのが基本です。「年金が減るならやめておこう」と申請しないのは、たいていの場合もったいない判断になります。気になる場合は年金事務所で自分の数字を確認してください。
2027年3月に退職する我が家は、この給付を使いません
夫は現在54歳。60歳より前に会社員をやめる=対象外
ここは正直に書きます。我が家は夫婦ともに看護師で、2027年3月に2人そろって退職する予定です。夫は現在54歳。60歳より前に会社員をやめてしまうので、そのままなら高年齢雇用継続給付を受け取ることはありません。
それでも調べたのは「知ったうえで決めたい」から
制度を知らずに手放すのと、知ったうえで手放すのは別ものだと思っています。仮に夫が60歳まで働き続けて、再雇用で給料が大きく下がったなら、5年間で100万円を超えるお金を受け取れた可能性があります。それを分かったうえで、我が家は「お金より、子どもと過ごす時間」を選びました。
サイドFIREは「もらえたはずのお金」も手放す選択
早く辞めるということは、給料だけでなく、会社員だからこそ使える制度もいくつか手放すということです。高年齢雇用継続給付もそのひとつ。退職金の増える分、厚生年金が増える分、傷病手当金などの保障。それらを全部ひっくるめて「それでも早く辞めたい」と思えるかどうかが、判断の分かれ目だと感じています。
逆に言えば、60歳以降も働き続ける道を選ぶ人には、この給付は大きな追い風です。どちらが正解ということではなく、自分の家庭がどちらを選ぶのかという話だと思います。
まとめ|「60歳から給料下がった?」の一言が数十万円を守る
- 高年齢雇用継続給付は60歳以上65歳未満・雇用保険5年以上・賃金が75%未満に低下で支給
- 64%以下まで下がれば賃金の10%(最大)。しかも非課税
- 月給24万円で最大なら月24,000円・5年で約144万円
- 2025年4月1日以降に60歳になった人は15%から10%に縮小
- 2026年8月1日から支給限度額397,369円(毎年8月1日改定・超える月は支給なし)
- 手続きは会社経由。もらい損ねを防ぐには自分から一言
- 気づくのが遅れても時効は2年。さかのぼって申請できる
- 年金との調整で最大4%止まるが、差し引きすればプラスが基本
我が家は使わない制度ですが、調べてよかったと思っています。知らずにもらい損ねるのが一番もったいない。ご両親や職場の先輩に60歳前後の方がいたら、ぜひ教えてあげてください。
※本記事は厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」「雇用保険の給付金は、2年の時効の範囲内であれば、支給申請が可能です」、ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」、日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」をもとに、2026年8月時点で確認できる内容をまとめたものです。金額の試算は支給率10%で単純計算したもので、実際の支給額は賃金の低下率や支給限度額によって異なります。個別の受給可否や金額は、お住まいの地域を管轄するハローワーク・年金事務所にご確認ください。





